スマート〇〇がスマートでなくなる日

いわゆる「スマート農業」呼ばれるものに接するときは,一歩引いて見るようにしている.もちろん個々の技術は立派なものだし,私の研究内容もその範疇に入りうる.が,それらを「スマート農業」と一括りに呼ぶことに釈然としないのだ. 僕は「スマート農業」…

動的な共同体の生態

中国の歴史には、北方の民族が中原に侵入して成立した王朝がたびたび登場する。鮮卑の北魏、蒙古の元、女真(満洲)の金・清など。彼らに共通するのは、自らを社会も文化も全く異なる中華の後継者と位置づけ、程度の差こそあれその在り方を積極的に取り入れた…

家族的な,あまりに家族的な

日本の共同体は,家族的な結びつきを求める. 家族的な共同体は,その成員に状況に応じてあらゆる役割を期待する. 家庭ではメシを作り,掃除をし,子供や年寄りの面倒を見る.それが死ぬまで続く.職場では数年おきに部署を移動し,本来の職務以外に様々な…

作り手と使い手

先日実家に帰った折,玄関先の青い花瓶に,薔薇の花が生けてあった. 花瓶はかつて私が陶芸を趣味としていた時に作ったもので,釉が垂れたところが泡立って表面がぶつぶつとしている. そこへ,母が庭先から赤い薔薇の花を切り取ってきて,生けてあったので…

農業とは殺すことと見つけたり

普段農業に触れる機会の無い人が農村に行ったり,農作業を体験したりすると,大体お決まりの台詞が出てくる.「自然の中で生きものを育てるって,良いですね」感動するのは結構だが,僕はこんな台詞を聞くたびに違和感を覚える. まず「自然」についてだが,…

人生で大切なことは、すべてゲームから教わった(?)

これまで、仕事・勉強・研究の傍ら、たくさんの本を読んできたし、たくさんの映像作品も見てきた。この国が平和でかつ文化資本の蓄積があることに、感謝せねばなるまい。(それが今後どれだけ続くか不安な面もあるが、僕たちの世代で失うような情けないことに…

結局、ドローンで何ができるの?

この夏から,ドローンの登録が義務化されますね. お金はかかってしまいますが,これも時代の趨勢です. 私も個人でドローンを持っていますが,オンラインで案外簡単に登録できました. https://www.mlit.go.jp/koku/drone/ また,ドローンを飛ばすときには…

雑草と食べものから学ぶこと

だいぶ更新が空いてしまいました。 少し近況を書きます. 2021年春に福井県に戻りました。 今は酒米の品質向上という思いがけない課題をいただき,心機一転で励んでおります. 米粒の形状や構造が,登熟過程にどう影響されるか.非常に面白いテーマです. ま…

「何も無い」とか,アホぬかせ.

九月を以て伊那谷での三年にわたる修行を終えまして, 今年度いっぱい半年間だけ,九州宮崎に来ております. で,どこの地域に行っても地元の人が言うのは 「ここは何にも無い」ってなこと. 宮崎なんて,有名な人誰も出てないし・・・何言ってんの. 財部彪…

匠の技とは何ぞや

かつて堀江貴文氏が「料理人になるのに何年も修行する奴はバカ」と発言し,物議を醸した.随分な言い草だとも思ったが,彼の言いたいことも分かる.「匠の技」というのは,とかく聖域として扱われやすい.しかし,実際どうなのだろう?職人の持つ技能は,他…

ものがたりたがりばかり

まなじ使えるデータや情報が増えると,なんでもかんでも,とかく結びつけたくなるもの.壮麗な宮殿のような立派なモデルができると,仕事した感満載ですもんねー.せっかく集めたデータを使わないともったいない気もするし. どうしても人は物事を因果関係で…

データのバイアスを如何せん

前回,データを収集・共有するのは今やごく当たり前で,これからはそれをどう解析して実際の行為に結びつけるかが大事だ,という話をしました.そのためには,データの性質に合わせた解析方法を選ぶ必要があります. そもそも,僕らはどうやってデータを得て…

研究者の仕事って何?

論文を書いていてふと思ったこと.データ集めて解析して論文書いて・・・だけじゃ物足りないなあ,と. 論文は、コミュニケーションのための媒体です.誰とのコミュニケーションか?といえば,主に「研究者」です.ただし,ここでいう「研究者」とは,仕事で…

萌虫すごいぜ!

ある昆虫マニアの学生が,こんな話をしてくれました. 日本甲虫学会の学会誌「さやばね」は,毎号甲虫の細密な図が表紙を飾っているのだが,最近なんだか毛色が違ってきたとのこと. どんなイラストなのか,以下の学会のサイトで確認してみてください. http…

伊藤計劃没後10年: モデルと物語

今年は作家・伊藤計劃の没後10年の節目です. デビューしてわずか2年,34歳の若さでした. 前回の記事で引用した『屍者の帝国』は,伊藤計劃の絶筆を円城塔が書き継いだものです. これも含めて,伊藤計劃が作家としての短いキャリアの中で遺した作品は, そ…

残差の中に物語を求めて

どうも、「岩本愁猴のスナックあぜみち」です。 ただ今、階層ベイズモデルにどっぷり浸かっています。 ある変数を説明する変数を、また別の変数で説明し・・・というように階層的にモデル式を立てることで、 ものすごく柔軟にモデルを作ることができます。 …

新しい仏教体験?

母の実家がお寺だったこと、そもそも信仰の篤い越前に生まれたこと。 私にとって仏教は身近なものでした。 お堂の真ん中が囲ってあって、天井からキンキラキンの飾りが下がってて、奥にご本尊があって、 今は亡き祖父がむにゃむにゃとお経を上げている。それ…

「iNaturalist」の活用方法を考えてみた

お久しぶりです。「岩本愁猴のスナックあぜみち」です。 以前、このブログで「iNaturalist」というアプリを紹介しました。 A Community for Naturalists · iNaturalist.org スマホで生きものの写真を撮ると日時や位置情報と一緒にクラウドにアップロードでき…

仏像と堕落

最近、高遠で石仏を見る機会が多かったので、その中で思ったこと。 仏像の歴史をたどってみれば、インドで誕生した初期の仏教では仏像を拝んだりしてなかった。 それがガンダーラでギリシャの彫刻文化に触れたことで、 「やっぱ像にした方がパッと見でわかり…

講義のこと

どうも、「岩本愁猴のスナックあぜみち」です。 先週は急遽、郷里でもある福井県に出張することになりました。 福井県立大学の先生が、県内の現場で外来雑草の分布を調査しているのでその調査に加わり空撮画像を撮ってほしい、と言ってきたためです。 海にほ…

「茶碗の曲線」とリモートセンシング

皆さんご機嫌いかがでしょうか。またしても更新が空いてしまいました。 気がつけばすっかり秋。私が信州に来てから一年が経ちました。 皆さんのおかげで何とか干からびずに生きております。ありがとうございます。 ところで先日、中谷宇吉郎の随筆「茶碗の曲…

オープンエコロジー宣言!

どうも、「岩本愁猴のスナックあぜみち」です。 随分ご無沙汰をいたしておりました。緑の滴るような良い季節になりましたね。 年度も跨ぎましたし、皆さんもこの間にいろいろあったかと思います。 私も最近考えていることを書いてみますね。 先月、日本雑草…

表現することを侮るようなやり方は、やがて社会に致命的な停滞をもたらす。

どうも、「岩本愁猴のスナックあぜみち」です。 1月27日(土)、京都外国語大学国際文化資料館の南博史先生の講義に参加し、学芸員を目指す学生さんたちの前で話をする機会がありました。 雑草を研究している私が外大で何を?と思われるでしょう。 南先生や外…

平成広益国産考

どうも、「岩本愁猴のスナックあぜみち」です。 だいぶ更新の間隔が開いてしまいましたが、開店しておりますよ。 去る11月23日(木)、伊那市の赤石商店にて、映画「よみがえりのレシピ」上映会&記念トークイベントが行われました。 前回の記事にも書いたとお…

草www

どうも、「岩本愁猴のスナックあぜみち」です。 まずは告知から。 長野県伊那市の「赤石商店」にて、映画の上映会があります。 「よみがえりのレシピ」というドキュメンタリー映画で、 山形県を舞台に、各地域に伝わる伝統野菜を守り、現代に活かしていく人…

たにまにあ

どうも、「岩本愁猴のスナックあぜみち」です。 前回、「iNaturalist」っていうアプリの話をしました。 これ、研究室の先生に紹介したら、その先生が他の学生にも広めてくれて、 今ではみんなで楽しんでいます。 先生も「これなら学生実験とかで、植物の分布…

「iNaturalist」で自由研究が捗りそうな件

どうも、「岩本愁猴のスナックあぜみち」です。 大学院で雑草の分布や生長について研究しています。 「三つ子の魂 百まで」と申しましょうか、子供の時分から身近な動植物が好きで、 それが高じて農学の徒となった次第です。 皆さんは小学校の夏休みの宿題で…

世人もすなるブログといふものを、我もしてみんとてするなり。

はじめまして。岩本愁猴(しゅうこう)と申します。 このたび、ブログ「岩本愁猴のスナックあぜみち」を始めました。 日々の研究のことや、私の好きな歴史や工芸のことなどを中心に綴っていきます。 なお、「スナックあぜみち」は、ビートたけし氏監修のファミ…